金沢に行ってきました。
雨でした、やっぱり雨でした。
でも降ったり止んだりの霧雨小雨で、それはそれでよかったです。
数年来、金沢に行きたい行きたいと思っていた。
お庭もお城もお寺も美術館も海の幸も山の幸も、やたら期待が膨らんでいて、
でも実際行ってみたら、一体何を期待していたことやら、
と、なりやしないかと、少し不安に思ったものだけれど、杞憂であった。
期待以上のすてきなまちであった。
北陸の京都、とはよく言ったものだけれど、
地方都市らしく小ぢんまりとしていて、京都よりよほど歩きやすくて心地よい。
犀星がよく金沢のまちをこまかに描いたものだけれど、
時を経ているはずなのに、本当にそのまま。
まちというのは、意識的に保存しようと思わなければ、保存できない。
さて、木曜夜、月末の請求書処理をぎりぎりで片付け、
滑り込みで夜行に乗り込む。
金曜朝、浅い眠りから醒めきらない頭のまま、気付いたら金沢。
やたら近代的な東口からバスに乗って、まぁとりあえずと金沢城へ。
お城に行った、というよりは、お城周りを散策した、という方が正確である。
会社用パンプスで砂利道泥道を歩きながら、ふと何かを連想。
あぁそうだ、もう1年半も前、就活帰りに新幹線で草津に行ったとき、
あのときも黒パンプスで、verdeさんと雪の中をはしゃいだっけ。
などと懐古しつつ、森林浴を満喫。
していたら、社用携帯が鳴る。
あわわわわ、何やらかしたかな、と見たいような見たくないようなで携帯を開くと、
何のことはない、私が休暇中であることを失念している先輩からの、
11時出社って書いといて、という毎朝恒例のメッセージであった。
あぁ、こんなことに怯えるなんて、と情けない気分で金沢城を後にする。
続いてお向かいの兼六園。
何が素晴らしいって、兼六園では煙草が吸える。
観光地のつらいところは、完全禁煙のところが多いという点である。
金沢着1時間半くらいか、やっと朝の一服にありつく。
で、兼六園。
以前、私が行ってみたいのだと告げたところ、ある友人は言った。
いや、兼六園て、ただ松がやたら生えてるだけで何にもないよ、と。
しかもこの中途半端な季節。
花の季節でも緑の季節でも紅葉の季節でも雪の季節でもない。
行きたい行きたいと思う反面、一体何が楽しみで行きたいのかとも思っていた。
が、これも杞憂であった。
以前、日本の庭園と西欧の庭園との違いについて書かれた評論を読んだ。
細部は覚えていないが、そこには日本の庭園の特徴として、
小さいながらもそこに自然を、四季を大きく言えば世界を表現している、とあった。
西欧の庭園が、邸宅ありきで、整然と秩序をもって作られるのに対し、
日本の庭園は、自然をなるべく生かして、そのまま取り込もうとする。
人工物であることに変わりはないが、この差は大きい。
そういうことを思いながら、雨の兼六園を散策したのだった。
花も緑も紅葉も雪もなかったが、しとしとと降る小雨は中々風情があったように思う。
兼六園内の庵で早めのお昼。
旅程自体はコストを抑えた分、飲食だけはお金をかけると決めていた。
飲食だけは贅沢をしようと、すきなだけ美味しいものをいただこうと。
で、美味しいお弁当とお酒をいただく。
ごりのお吸い物が最高でした。
昔は苦手だったこぶじめも、何とまぁ美味しいこと。
満腹になって、これまたご近所の21世紀美術館へ。
モダンアートというものが、どうもよくわからなくて、以前は苦手だったのだが、
最近は素直に楽しい。
解説があるとまた楽しいと思えるようになったのも、モダンアートのおかげ。
わくわくしながら1周では飽き足らず、何度も何度もぐるぐる。
子どもが多いな、という印象。
そういう、公園みたいな感じのよいところだった。
ちょうど企画展でやっていたサイトウマコトという人は、
初めて知ったけれど、とても気に入った。
でも重いから図録は買わず、惜しいことをしたかと今でも思うが、
取り寄せるほどの思いはないから、きっと買わなくてよかった。
確か金沢市民は、月に一度、何週目かの土曜日に、
常設展を無料で見られるんだった気がする。
そういう機会を、もっと多くの美術館博物館が設けてくれていいと思う。
特に現代美術なんか、ふらっと気軽に立ち寄ってこそのものだと思うのに。
美術館を出て、武家屋敷のあたりをぶらついて、
お麩のおまんじゅうとお抹茶で一息ついて、
スタバで金沢限定タンブラ生産中止と知って落ち込んで、
美味しいものでも食べようと、市場に向かった。
当初は、料理屋さんで美味しい魚介とお野菜でもいただこうと思っていた。
が、時間が時間だということもあって、
うにでも海老でもいかでも何でも、安い。
おねえちゃん会社帰りけー、まぁったく金曜にひとりでー、
うまいつまみでも買うて晩酌かいなーがははは。
と、おっさんに言われる。
確かに会社帰りではある、荷物も通勤時と変わらないし、まぁそう見えるだろう。
ふむ、うまいつまみでも買うて晩酌、もいいな。
で、うにと牡蠣とさんまをさばいてもらって、お豆腐屋さんでおからを買って、
酒屋さんで地酒をたらふく試飲して、飲めるのかな、というほど買い込んで、
ちゃんと家にもカニと海老を送って、
そりゃもう、うきうきで、駅前のホテルへとたらたら歩いて行ったのであった。
こんなに食べられるのか、と思ったが、美味しいものはいくらでも入るらしい。
だらだらと、音楽を聴きつつ本を読みつつ、箸を進め、杯を傾ける。
そう、お酒。
我ながら、こんなに飲めなかろう、と思ったはずである。
無理だったら持って帰って飲めばよかろう、と思ったはずである。
が、気付けば買い込んだお酒は全て空いていた。
我がことながら、少しく衝撃を覚える。
そもそも私はこんなにお酒がすきだったろうか、と考え始める。
すきはすきだが、どちらかというと、お酒の席がすきだったのではなかったか。
いつの間に、お酒自体にこんなに浸かっていたのか、と暗くなる。
というところで、またしても社用携帯が鳴る、しかも電話。
あわわわわ、何やらかしたかな、と見たいような見たくないようなで携帯を開くと、
またしても何のことはない、朝と同じ先輩であった。
こっち豪雨なんだけど、帰れないんだけど、これってお前が楽しんでいるせいかな、
と言われるが、知ったことではない。
なお、金沢の夜は、止まないなりにも小ぶりの雨で、静かに更けていった。
土曜日、チェックアウト後、ひとまず駅へ。
買い込んだお土産と、いらないものをコインロッカーに突っ込んで、
片町方面へとバスに乗り、繁華街を歩いて、犀川を渡ったところでお昼。
お惣菜の並ぶおいしいご飯やさん。
青ねぎいっぱい、あさりのお味噌汁と肉じゃがが絶品でありました。
道路を挟んで反対側には雨宝院。
犀星が幼少期を過ごしたところ。
「幼年時代」の水を汲む件だとか、仏像を拾う件だとか、そんなことを思う。
でも拝観料をとられるというのがどうも癪で、中には入らなかった。
雨宝院を通り過ぎて、室生犀星記念館へと足を運ぶ。
正直、行こうか行くまいか、悩んだ。
文学館とか、記念館とか、個人的にはそんなに楽しいものでもない。
というのも、作品そのものはすきだけれど、
作家の生い立ちやら交友やらにさして興味もないということが多いからである。
犀星の作品はすきだけれど、果たして記念館に行って私は楽しいのか。
大体にして今回の旅行は、行きたい行きたい騒いでいたくせに、
こういう後ろ向きな考えもついて回り、しかし大体にして杞憂で終わったのだった。
今回の旅行でいちばんよかったのは、実はこの記念館かもしれない。
そもそも犀星の作品は、彼の生い立ちやら交友やらと密接にリンクしている。
自伝的な要素が強い。
だから犀星自身を追うことは、
私が心動かされたいくつかの作品を追うことと、近い、というより重なる。
だからあまり背景に興味を抱かない私でも、違和感なく入り込めたわけである。
流石にその場で小説を読みふけるほどの根性はなかったが、
詩集を開いてしとどに降る雨の昼間を過ごす。
ふいに泣きそうになって、いかんいかんと姿勢を正して記念館を出た。
記念館のあとは、忍者寺こと妙立寺。
このお寺、忍者とは関係ないが、からくり屋敷のような作りになっており、
中を案内してくれるツアーのようなものが30分おきに開かれているのだが、
土曜日ということもあってか、大盛況。
事前に友人から、予約が必要だとの話を聞いていなければ、
私は威容を目の前にしながらすごすご帰らねばならなかっただろう。
私が参加した回だけでも40人前後はいた気がする。
グループに分けるために名前と人数が呼ばれたが、
ひとりで来ていたのはどうやら私だけだったようで、
今更ながら何となく恥ずかしくなる、が、忘れたようにいちいち感嘆。
いや本当、よくできてるなぁと驚嘆し通し。
その後は茶屋街をぶらついて、繁華街に戻って、
買いもしないのにお洋服など見て、
コーヒー飲みつつ煙草喫みつつ本読みつつ音楽聴きつつお手紙書きつつ、
お夕飯まで時間をつぶして、何食べようかと考える。
見もしないで考えても仕方がないので、暗くなった頃、飲み屋通りを散策。
食には贅を尽くすという今回の旅行。
まぁ所詮ひとりだし、贅沢ったってそこまで高くもならない。
と、お値段全て時価のお店でカウンターに座る。
困るくらい、何を食べても美味しかった。
れんこんの蒸し物がおいしかったなぁ、さざえもおいしかったなぁ。
やっぱり目の前で料理してくれるのは見ていて楽しい。
お皿が空くとちょちょっと軽いものを出してくれるのもうれしい。
ひとつ空けて隣に座っていた中年男性ふたりになぜかセックスの話をされ、
何だこれ、と思ったが、1杯ずつおごってくれたからまぁいいや。
満腹になって、気持ちよく酔って、でも思ったほどお値段も張らずに済んだ。
地方価格は素晴らしい。
心底、東京に帰りたくないと思う。
そうはいってもそんな度胸はないので、素直にバスに乗って、
なぜか右膝を痛めて、無事東京に帰ってきてしまったのだった。
まぁ帰ってきても、送ったカニと海老が迎えてくれて、
何となく気分は片足金沢なんだけれども。
とにかくよい旅行であった、また行きたいな金沢。
旅にいづらば
はろばろと心うれしきもの
旅にいづらば
都のつかれ、めざめ行かむと
緑を見つむるごとく唯信ず
『はつ恋』 ツルゲーネフ
父、頑張るなぁ。
これは中々気に入った。
『ゆで卵』 辺見 庸
言わんとすることは不快でない。
流れ、なんてものがあるかどうかわからないが、そういうものも嫌いでない。
でもどうも雰囲気がすきでない。
言葉遣いの問題かな、何か、こっぱずかしい。
coldtopicくんあたり、すきなんじゃないかな、とふと思う。
「河童小僧」 岡本 綺堂
「鐘ヶ淵」 岡本 綺堂
こんなん読んでても、お給料は入る。
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